【アメリカを読む】「暗黒の9月」投資銀行なぜ崩壊した

 「この1週間は、米国流資本主義の進化における決定的な方向転換を記録した」

 米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムニスト、ディビッド・ウェッセル氏は20日付の論評でこう指摘した。

 米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻(はたん)に始まる「暗黒の9月」。大恐慌以来最大の金融危機は確かに、米流自由市場主義の牙城であるウォール街のいくつかの神話を崩壊させた。

 ■5大証券が消えた

 そのひとつが、「投資銀行時代の終焉(しゅうえん)」(英紙フィナンシャル・タイムズ)である。

 預金業務を行う「商業銀行」と対比される投資銀行は、株式・債券の引き受け、M&A(企業の合併・買収)の仲介などを手がける法人向け証券会社を差す。米国で「投資銀行」とは主に、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー(モルスタ)、メリルリンチ、リーマン、ベアー・スターンズの5大証券を指してきた。

 実力主義で高収益を追求する企業風土やビジネスモデルが、優勝劣敗のウォール街でも際立っていたからだ。近年、米投資銀行が世界をリードしたのが証券化業務だった。

 低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)などの債権を住宅ローン担保証券(MBS)などの金融商品に加工して、世界中の投資家に販売するだけでなく自らも大量に購入。緩やかな規制制度や、自己資金の何倍もの資金を投資につぎ込んで収益性を高める「レバレッジ=テコ」を駆使して、高収益をものにした。

 リーマンやメリルのレバレッジ率(自己資本の何倍を投資に回したかを示す比率)は昨年、30前後に達したという。しかし、昨夏以降の金融市場の混乱で、「投資銀行の高レバレッジが逆転を始めた」とニューヨーク大のエコノミスト、マーク・ガトラー教授は指摘する。

 3月にベアーが経営危機に陥り、米銀大手JPモルガンに買収された。今月15日、リーマンが破綻し、メリルリンチは米銀大手バンク・オブ・アメリカに身売りを決めた。ゴールドマンとモルスタは巧妙な投資戦略でサブプライム関連の損失拡大を食い止めてきた。しかし、リーマン破綻以降、市場に資金調達を頼る投資銀行のビジネスモデル自体が「持続不可能」と烙印(らくいん)を押され、株価が急落した。

 21日夜、2社は証券専業を放棄し、米連邦準備制度理事会(FRB)監督下の銀行持ち株会社への移行を突然発表する。

 「より強固な銀行に変われると信じている」とゴールドマンのロイド・ブランクフェイン会長兼最高経営責任者(CEO)は声明でこう述べた。5つの投資銀行が半年でなくなった。

 ■新政権に影響力残せるか

 ゴールドマンは、元共同会長でクリントン政権の財務長官として90年代の通貨危機の対処に敏腕を振るったロバート・ルービン氏を筆頭に、首都ワシントンの経済・財政政策を担う人材を輩出し続けてきた。

 ゴールドマンのトップから2年前に就任したポールソン財務長官は、ジム・ウィルキンソン首席補佐官をはじめ4人の側近をOBで固め、ベアーの支援、米政府系住宅金融会社の資本注入など一連の政府救済の立案をともに手がけてきた。

 しかし、7000億ドルの公的資金を投入する不良資産買い取り策の法案化をめぐり、長官は「税金によるウォール街救済だ」と一部議員や世論の厳しい反発を浴びている。

 ポールソン長官は来年1月の引退を表明している。新政権下でも「投資銀行時代」は続くのか。ウォール街の行方とも無縁でない。(ワシントン支局 渡辺浩生)




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